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2024年4月開校! FC今治高校 里山校
スペシャル対談

共助のコミュニティのキャプテンを育てる

 

2024年4月、今治に新しい高校が誕生しました。その名も「FC今治高校 里山校」通称「FCI」。これからの世界の歴史を動かす「ヒストリック・キャプテンシップ」を持ったリーダーの育成を目指す、前例のない学校です。全国から熱いハートを持つ生徒たちが集まり、生き生きと活動し始めた現地を訪れ、辻󠄀校長にお話を伺いました。

  • 青野

    学校の場所は、これまで今治明徳高等学校 矢田分校だったところですね。どのような編成になっているのですか?
  • 辻󠄀

    昨年度まで今治明徳高等学校にあった「本校」と「矢田分校」のうち、「矢田分校」を再編成したのが「FC今治高校 里山校」です。昨年度の矢田分校の1、2年生がそのまま今年度2、3年生になり、新1年生がFC今治高校としての1期生です。2、3年生は教育課程もすべて今まで通り、3学期制で定期テストもありますが、1年生は前期後期の2学期制で定期テストはなし、入試も学科試験なしなど、全く別のものになっています。
  • 青野

    1年生と2、3年生はどのように交流していますか?
  • 辻󠄀

    新1年生の文化と、これまで通りの2、3年生の文化と、2つの異なる文化が同じ校内に共存しているので、今はまだお互いを理解し合おうと手探りで歩み寄り始めている段階です。教育課程が別なので基本的には授業で接点はありませんが、1年生の授業で外部講師を招く際などは、2、3年生も希望者がスポット参加できるようにと考えています。アートなど特別な授業は貴重な機会ですし、できるだけ多様な人たちと交流できるようにというコンセプトがありますので、全学年が関わり合うようにどんどん混ぜ合わせたいと思っています。1年生自身も、2、3年生とうまくやっていくには、あるいは同じ校舎にいる今治明徳中学生が里山校に進みたいと思ってくれるには、どんな関わり方をすればいいか、自分たちで考えて活動しています。
  • 青野

    新1年生は校則もないと聞きましたが、本当ですか?
  • 辻󠄀

    はい、ルールとして設けているものはありません。服装も自由で金髪やピアスもOK。でもモラルとしての約束事が自発的に生まれてきています。また、絶対にやってはいけないことを三つだけ決めています。一つ目は、命の危機に関わること。二つ目は、物を壊したり他人を傷つけたりすること。三つ目が、他人の学びや成長の機会を妨げたり奪ったりすること。この三つ以外は何をやってもいいよというスタンスです。
  • 青野

    社会的にみてダメなことはダメという基本を守りながら、自由な環境にいるのですね。先生と生徒の関係性はどうですか?
  • 辻󠄀

    当校は先生のことを「コーチ」と呼ぶのですが、例えば何か問題が起きても、コーチは一切生徒に指示をしません。すると生徒は自分たちで話し合って、解決策を見つけ始めます。先日も何人か遅くまで残っていて、聞けば「この学校をもっと良くするにはどうすればいいか、話し合っていたら夜になっていた」って。みんなが気持ちよくいられる方法を探そうとしているのですね。「共助のコミュニティのキャプテンを育てる」という大きなテーマがあるのですが、そこに向けて、生徒は自発的に動いています。
自分で答えを見つけるまで熱く見守りひたすら待つ
  • 青野

    自由に主体的にという姿勢は、高校生と言うより大学生に近いですね。そして、やはり高校生らしく集団の中にいて他人の邪魔をしないなど必要なことは守られています。ここで学んだ子どもたちは、将来どうなっていくでしょうか。
  • 辻󠄀

    まず大学受験をしてくださいとは、僕らは言いません。受験したければすればいいし、就職しても、起業してもいい。在学中の起業も大歓迎です。実際に起業の計画を語る子たちもいます。多様な進路になると思いますが、大学受験を選ぶ子も少なくはないでしょう。当校の学びは、実は近年増えている大学の総合型選抜との相性がとてもいいのです。なぜなら高校3年間を通して、「君はどうしたいんだ」「何がしたいんだ」「これから社会をどうしたいんだ」と、ひたすら問われ続けるのですから。それに対して自分の言葉で答えられる子たちが、どんどん育っています。
  • 青野

    ここでの3年間が生きてくるのですね。
  • 辻󠄀

    その通りです。重要なのは「学歴」ではなく「学習歴」だと近頃よく言われますが、その意味でも、ここで3年間学んだという事実が強みになる日は、そう遠くないはずです。
  • 青野

    今後もし、ここでの学びに挫折しそうになる子がいたら、どうケアしますか?
  • 辻󠄀

    まず基本は、岡田さん(学園長の岡田武史氏)が言い続けている「どうしたの?」「君はどうしたいの?」「先生にできることはある?」という三つの声がけを続けます。すぐに答えや選択肢を示さないと徹底しているので、ひたすら待って、本人の気持ちが動くのを待ちます。例えば学校に来なくなっても、「早く来いよ」とは言わず、本人が行きたくなるまで待ちながらケアをします。ほったらかしとは違うんですよね。かなり熱く見守りつつ、その子やその時に応じた対応をします。
今治に住む人たちが、生徒のためにできること
  • 青野

    今治全部を舞台にして、地域の人たちと交流しながら学ぶそうでうね。どんな計画がありますか?
  • 辻󠄀

    FC今治の試合運営をサポートするボランティアグループ「Voyage」の活動に参加したり、地元企業などとコラボして、企業の課題と高校生の発想を掛け合わせて価値を生むことに取り組んだりします。
  • 青野

    社会人のような経験ですね。当社も協力できるなら、日常ではあまり関わらないような冠婚葬祭の仕事を体験できます。人間関係が希薄になりがちな昨今ですが、人生の節目で人々が集まる儀式的なことの意義や良さを伝えていくにはどうすればいいか、一緒に考えてみたいですね。
  • 辻󠄀

    本校の理念が「命をつなぐために、生きることの本質を問い、実践する」というもので、冠婚葬祭はまさにそこに直結します。実現すればとても有意義なプロジェクトになりそうです。
  • 青野

    地域に住む一般の人たちが協力できることはありますか?
  • 辻󠄀

    夏に予定しているオープンスクールや学校説明会に、住民の方々が何らかの形で参加いただける方法を考えています。県外からの生徒の保護者にとって、今治という地で子どもが安心安全に暮らしていけるかどうかは最大の心配事でしょう。それなら僕らが一生懸命語るより、実際に見ていただくのが一番だと思います。住民の方にもいろんな形で参加してもらいながら、今治のいいところも紹介して。そういった活動にぜひ手を挙げていただければ嬉しいです。親元を離れて寮生活をしている子たちは、企業や住民の方など地元の人たちとの活動を通して、今治のお父さんお母さんみたい人を見つけてほしいですね。また3年生になると寮を出て、空き家を改修して住んだり高齢の方の家に居候させてもらったりして各自が地域で生きていくことになります。そこに向けてもみんな今、地域の方々と仲良くなろうと積極的にがんばっています。
  • 青野

    学校にも今治にも魅力を感じてもらって、全国からたくさんの生徒さんが集まるといいですね。
  • 辻󠄀

    全国47都道府県から1人ずつは来てほしいというのが理想です。これから全国にもっと呼びかけていきます。また地域の皆さんにとっても、普段から学校が気軽に遊びに来られる場所になるように、色々工夫したいなと思っています。ふと見ると生徒と地域の方がその辺でお茶を飲んで雑談しているというような風景が普通になるように。
  • 青野

    学校が交流の場になれば、とても素晴らしいですね。生徒にとっても、住民にとってもFCIが未来の何かのきっかけになることを期待しています。