NOW LOADING..

Topics

地元出身輝く人

株式会社SKYAH CEO 原 ゆかり氏

支援とは、与えることではなく 自力で続けられる成長を促すこと

今治市出身の原ゆかり氏は2009年に東京外国語大学を卒業し外務省に入省。2012年に留学プログラムの一環で訪れたアフリカのガーナ共和国で、人生が大きく動き始めました。滞在したボナイリ村には幼稚園がなく木の下が教室代わり。雨が降れば子どもを預かることができません。原氏はお世話になった村への恩返しに寄付を募り園舎を建て、これが原点となり原氏が現在共同代表を務めるガーナNGO法人 MY DREAM.orgが生まれます。在ガーナ日本国大使館の勤務を経て2015年に外務省を退職、2018年に株式会社SKYAHを立ち上げ、アフリカ諸国と日本の架け橋となり活躍しています。
 
  • 青野

    原さんはアフリカの村に幼稚園やトイレを作られていますね。アフリカに限らず世界中で、トイレがない学校に通う子どもたちは森へ行き、免疫がない子はそこで病気になることもあると聞きます。日本のさまざまな団体が海外へ設備を寄付していますが、設置後の管理のことまで考えが及んでいません。しかし原さんは、ただ管理を現地の人に委ねるのではなく、資金が必要なら彼らが収入を得られるようにする。先の先まで見ることができていると感心しました。
  • 支援は「自分ごと」にならないと大事にされません。与えられたものを自力で管理し活用し続けるには、自分が貢献したものだという思い入れが必要です。現地の人が主体になり舵を取ることが重要なのです。外から来た人がいなくなった瞬間に途切れてしまうようでは、その取り組みは失敗です。私が何かを始める時はいつも、「あとは自分たちでやるから、ゆかりはもういなくていいよ」と言われることを目標にしています。
  • 青野

    MY DREAM.org を通じて販売されているガーナコットン商品も、ボナイリ村のお母さんたちの手作りの品が収入源となり、教育や保健衛生の環境を整えるための資金になっているのですね。
  • 金銭や物質を与えるのではなく、技術や知識を身に付ける手助けをしたかったのです。村人たちが自力で経済力を得て発展していけるように、元から持っていた縫製技術や文化を活用する方法を考えました。日本には「魚を与えるのではなく、釣竿を渡す」という考え方がありますが、その実践に他なりません。
  • 青野

    原さんは人や物の流れを掴むセンスがあるのだと思います。私たちもサービス業なので、人がどう感じ、どう喜んでいただけるかを大切にしています。必要としている人のために動く。その心理を原さんは的確に捉えていますね。しかしそのバランスが取れていないと、与えられる側も「施し」に頼るようになってしまう。支援や開発とは何か、考えてしまいます。
  • その通りですね。そこにいる人が本当に求めているものは何か、ケースバイケースできちんと見極めて、それに応じた開発支援をオーダーメイドで仕立てられれば素晴らしいと思います。例えば今治で成功したものが、別の地でも成功するとは限りません。それぞれに合った方法でなければ、簡単に成功するものではないのです。
夢が身近になるように 故郷の言葉で世界を語る
  • 青野

    アフリカと日本を行き来し、昨年設立された会社は東京にありますが、原さんにとって故郷である今治はどんな存在ですか?
  • とても愛おしい場所です。今治かアフリカかというくらい大切な場所です。現在私が関わっている商品たちも、今治の企業で扱っていただくことに大きな意味があると思っています。物流がこれだけ整った時代ですから、海外製品が日本のどこに入ってきてもいいはず。地方創生というなら、何かがスタートする起点が地方であってもいいはずです。最近サポートを始めた南アフリカ初の黒人女性醸造家が作るワイン「ASLINA(アスリナ)」もその一つ。今治からどんどん世に出て行ってほしいです。
  • 青野

    アフリカを盛り上げてきた原さんからみて、これから今治をもっと元気にするにはどうすれば良いと思われますか?
  • 子どもたちに、夢の選択肢を少しでも増やしてもらいたい。そのために、今治から日本や世界の各地へ出て行って活躍している人たちに帰ってきてもらって、子どもたちに話をしてほしいです。同じ伊予弁を話す先輩の話だと、子どもたちにとって夢が現実味を帯びてくるようです。例えば外国語だと別世界の話のように聞こえますが、自分と同じ言葉ならぐっと距離が縮まります。日本の中でも、同郷の方言が一番胸に響くのではないでしょうか。色々な職業の人から直接話を聞いて、夢が少しでも広がればいいなと思います。私もアフリカで学んだことや経験を少しでも今治に還元したいので、機会をいただければできるだけ伺ってお話をさせていただいています。小さな子どもから大人まで、小さな気づきでもいいので届けたいと思っています。
  • 青野

    ずっと中心にいると問題が見えづらくなることもあるので、さまざまな立場で外からの視点や気づきを加えていくことは大切ですね。これからも今治から全国、そして世界を舞台に活躍を続けて、今治にも良い刺激を与えてください。